僕は忘れない、あの日のことを

140字では伝えられない。

人間の大きさ 自然の大きさ(長崎旅行記:3日目 池島)

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三日目は朝クソ早くに起きて池島へ。池島は昭和27年から平成13年まで石炭が掘られていた、軍艦島と似たような感じの炭鉱島で、周囲4kmの島に最盛期は8000人近くが住んでいたんだとか。今の人口は150人くらい。そう、軍艦島と違いまだ人が住んでいます。さらに、つい最近(といっても15年前ですけど)まで稼動していたため、ガイドしていただけるのは実際に島に住んでいた方で、話がめちゃくちゃ面白いんですよ。絶対に行ってくれ。

長崎市から行く場合、海沿いの国道202号線をずっと北上していくのですが、これがまた最高のルートでしたね。確かに遠いんだけどあまり気になりませんでした。四日間、ずっと公共交通機関を使ってきたのですが、ここは車やバイクや自転車で来るべきところですよ。最高。特に夕陽が丘そとめという道の駅が途中にあるのですが、これ画像検索してもわかる最高さです。バス移動をこれほど恨んだことはない。というかさっきから最高しか言ってない。語彙がなさすぎました。

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右端に見えている島が目的地の池島。人工物があるし人が住んでるんだね~とか連れ合いの方とほのぼの話してたらあれが目的地で大爆笑でした。真ん中に見えるのは大角力(おおずも)。中央に穴が開いている。びっくり。

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大瀬戸港へ到着するも、船は一時間後(しかし次のバスに乗ると今度は間に合わないのだ!)、で最寄のコンビニは徒歩35分。田舎に来たという感じでしたね。海は綺麗でした。

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そんなこんなで船で池島へ。航路は既に最高でした。

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海からの全景はこんな感じ。

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上の写真で一番手前にある建物群。公営住宅で、今でも人が住んでいます。そういえばこの港、ちょっとした湾になっているのですが、元は大きな淡水池で、それが池島という名前の由来になっているんだとか。石炭を搭載する船を停泊させるために、その一部を海に繋げて港にしています。だからここのコミュニティバスの停留所名は「池の口」。

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上はアンテナあるし人が住んでるのだと思うのですが、下はもう腐食して欄干が崩壊しています。やっぱり崩壊と生活が共存しているのが本当にシュールというか、不思議な感じでしたね。

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港の周辺だとこれも驚き。桟橋が崩壊したそうです。誰も困らないし、そのまま放置されているんだとか。凄い光景だ。

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港の周辺をちょっと見た後は炭鉱案内。わくわく感!

ちらっと上に見えているのはインドネシア語かな? 閉山後数年間、池島炭鉱の技術を海外に伝えるため、主に東南アジアから人を招いて研修を行っており、僕たちが案内されたのはその名残。実際の炭鉱は地下650m! に広がっています。クソ広いので、炭鉱の中を電車といわゆるオートウォークみたいな自動床……マンベルト(映像は人を輸出してる光景みたいだった)で移動していたそうです。

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石炭を掘る機械。

掘る部分のサイズはもう忘れてしまったのですが、120cmくらいはあった気はします。

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長さは12m。上の奴と同じものが向こう側にもついていて、ガリガリやります。いちいちスケールが巨大で感覚がおかしくなりますね。炭鉱内を長さ12mある巨大な物体を移動させられないので、別の部分を掘るときはこれを一回全部分解していたそうです。そして運んで現地で組み立てます。全部ボルト締め。つくづく凄い世界ですね。

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あとは説明しないから、ただ良さを感じてくれ。

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ところで、池島炭鉱では6人の殉職者が出たんだそう。とても少ないらしい。「技術を輸出する」ということをやっていたのだから、これは本当なのでしょう。でも一般的に言って、6人の殉職者が出たら相当な大事件だと思います。なんというか、炭鉱というのは本当に危険で、酷い話ですがそういう意味でもスケールが大きいのだなあと思いました。池島の隣の島、松島では「炭鉱が水没した」(炭鉱島は海の下掘ってますからね)という、どれくらい被害があったのかにわかに想像がつき難いような事故があったそうです。

 

この後地上に戻って島の中を散策へ。

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上は一帯に立っている社宅の一つの屋上からです。階段を登る途中には生活もありました。

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これは小学校と中学校。多いときは1800人の子供が通っていたそうだが、今は島に子供は二人。

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第二立坑。トップの画像の建築物で、近づくととても巨大でびびります。昔はここから地下650mまで降りていたそうです。やや手前は開けた土地で、ゴルフをしていたんだとか。

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ゴルフ……?

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錆が良い。ちなみに最初に写真を撮ったあたり、上の手すりが崩落寸前でごく普通に危険。怖すぎて真下まではいけませんでした。

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八階建てのアパート。エレベータとかはない。

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かわりに裏に行くと四階部分にこんな感じで橋がかかっています。坂に建っているのですね。

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海水を真水にかえる設備。池島には淡水がなく、これがないと生活不可能だったそうです。8000人の生活用水をすべてまかなう工場とは。

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水は地上のダクトを通っていく。珍しいですよね。

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そんな感じで、ぐるぐる回って港へ戻ってきました。最後に、中央青緑の機械は石炭を船に積む機械らしい。つまり、あの機械の高さくらいまで石炭がうずたかく積まれていたのだとか。本当か。

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もっと色々写真を載せたいと思ったのですが、気力と紙幅(嘘)の関係上この辺で。なんか雑多にあったものを並べて書いただけの雑ブログ記事ですけどまあ良いでしょう。百聞は一見にしかず的なね? まあなんというか、僕もこの島をきちんと語る言葉を持ちませんし。うーん……幽玄という感じですね。4km四方の島に8000人が住んでいたのだから、この島はかつて、僕が想像するよりずっとごちゃごちゃしたコンクリートジャングルだったはず。炭鉱では人間の技術の粋を見た気がしますが、この島にはそれすら飲み込む自然の生命力がありました。

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ありがとう池島。

 

その後船で佐世保へ。ここは朝が早かったのでまたしてもごくふつうに寝てしまいました。泊まる場所をその場で決定してちょっとウロウロしました。で、ご飯をどこで食べるか散々苦しんだ挙句、一ポンドのステーキ食べました。おいしかった。(こなみ)

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雨・平和・イカ(長崎旅行記:2日目 長崎市内)

朝バスで雲仙から長崎市内へ。移動中の景色についてはまあごく普通に寝ていたから撮ってないですよね。段々畑があったのだけは覚えています。

 

そして市内へ。長崎市といえばこれですね。路面電車。運賃は一律120円、一日乗車券も500円というはちゃめちゃリーズナブル公共交通機関で、その上だいたいの観光地を押さえており、これに乗るだけでだいたいなんでもできます。利用客も多いけどそこはご愛嬌。

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まずは平和公園の方へ。小学生以来です。大通りのすぐ近くなのに、とても静かな公園で、それが印象深かったですね。静謐な場所でした。というか、ここは元々刑務所だったのですね。基礎のところしか残っていなくて、ぼんやり古代の遺跡みたいなものを思い出しました。一瞬でそうなったというのは本当に凄絶な暴力です。あと、これは完全に余談ですけど、ふと横を見ると、平和祈念像の前で連れ合いの方が静かに手を合わせていて、真摯な方なのだなあという思いを新たにしました。静かな祈りはきっとこの公園を象徴する姿。実際それが公園内で一番印象に残りました。

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そういえば、この平和公園(実は平和公園というのは周辺の資料館や爆心地、運動場等をひっくるめて言っているらしく、平和公園の中で平和祈念像がある区画、と言った方が正しい)、各国から贈られたモニュメントがあるんですよね。で、

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このソ連の像をはじめとして、チェコスロバキア社会主義共和国、東ドイツ中華人民共和国ブルガリア人民共和国、キューバ社会主義国家のモニュメントがまとめてずらずらあって、謎の興奮がありましたね。うーむ東西冷戦の賜物だ。

 

と、妙なところに盛りあがりつつ浦上天主堂へ移動。

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でかい(確信)

浦上キリシタンは江戸末期から明治にかけて、禁教政策に対抗したため一村3000人以上が全員流刑のうえ棄教させられるというめちゃくちゃな処罰を食らっているんだとか。さらにここは爆心地のすぐ近くで、1945年には12000人いた信徒のうち、9000人は亡くなったといわれているそうです。悲劇を何度も乗り越えた土地なのですね。

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浦上天主堂の像と壁と思しきものが残されていました。でも掲示がなくて全然わからないんですよね。最初首のない像がたくさんあってびっくりしました。

天主堂の中は普通に教会なので、撮影禁止、お静かに。静かで、荘厳な教会です。また、被爆マリア像といって、崩壊した旧浦上天主堂の中で偶然見つかったマリア様の顔の部分が飾ってあります。焦げ、目を失ったマリア像。何か胸に来るものがありましたね。

 

と、この辺で雨が降り出しましたね。降水確率は100%だった。悲しい。

築町の方まで延々移動して長崎名物と噂のトルコライスを食べました。ニッキー・アースティンというお店で、着いたのは2時半くらいだったのに混んでました。凄いお店だ。トルコライスの種類が200種類くらいあるとんでもないお店(メニューは撮影禁止だった)で、選ぶのが大変楽しい。あと店員さんが、お冷が少しでも減ってると絶対に水を注ぎにくるサービス精神旺盛なお店でした。これ本当に減ってると見るや注ぎに来るので、ここだけで一リットルくらい水を飲まされた気がします。もういいよと言っても来る。いったいなんなんだ。トルコライスはめっちゃおいしかった。

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出るとはちゃめちゃに雨が降っていたので近くのアーケード街に避難。長崎に行った日はちょうど長崎くんちという大きなお祭りをやっていた(本当にたまたまで旅行を始める前日にやっていることを知った)のですが、その一団がやっぱり雨を避けてアーケードにいました。これ、庭先回りというイベントだそうですね。

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雨を避けてシートを被っている宝船。長崎くんちといえば龍踊りだけど、龍は見ることが叶わなかった。それから商店街でたまたまこんなものを見つけてちょっと見て、波佐見焼きいいよねみたいな話をしつつ雨が小降りになったので出島の方へ。

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出島(今は完全に陸続き)は入場料が必要なのだけど、どこに行ってもチケットを渡す人がおらず、本当に謎だった。普通に入ろうと思えば入れるのでは。あと出島模型にお金投げるのはやめろ。絶対なんのご利益もないぞい。

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ここも展示が色々あって逐一報告すると僕の気力が死んでしまうのですが、個人的に一番面白かったのがこれ。

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これは英和辞典。見てください。犬ーbitch。誤解を生みすぎでしょ。他も面白いので、あとは行ってください。わかりましたね?

 

出島ワーフに行ったりしていたら、そんなこんなで暗くなったので退散して宿へ。雨は止まなかった。辛い。

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夜はむつ五郎というお店でイカを食べました(活きいか一匹2800円で何かを察しろ)(伊勢海老一匹7800円!) イカはまだ動いていて、最終的に足が皿の外に出て逃げようとしている感じになっていました。連れ合い曰く「目が合って若干かわいそうになる」

カウンター席だったのですが、このお店凄くて、何が凄いってカウンターの目の前に生簀があるんですよ。上は鏡張りになっていて、生簀の中が見えます。凄い。

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いかは刺身を食べるとお皿を一度下げて、残りの部分を別の料理にしてくれます。今回は天ぷら。一匹まるごと食べ尽くすと、二人で一杯でも結構な量になりますね。

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おいしかったです(こなみ)

本当は稲佐山で夜景を見たかったのですが、雨と時間的な問題があって断念。悔しいですね。

 

グラバー園のほうとか行ってないのですよね。行きたかった。どうも大浦天主堂下ではなくて、石橋の方から行くのがお勧めらしいですよ。

稲佐山で100万ドルの夜景を見る。

長崎くんちも晴れの日にちゃんと見る。今度こそ龍を見る。

・三菱造船所へ行く

 

他にもたくさんありそうです。長崎市内は見るべきものが多すぎます。本当に雨が惜しまれますね。ただご飯はめっちゃおいしかったです。店の名前挙げてるのは超お勧めだからですよ。絶対に行ってくれ。

というわけで二日目は終わり。

地獄内は危険です(長崎旅行記:1日目 島原半島)

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10月7日~10月10日にかけて、長崎へ旅行していました。というわけで、四回くらいに分けて感想を書こうかなと思います。本当に色々あった。また行きたいですね。まだまだ見てまわるところがたくさんあるのですよ。みんなも行ってくれ。一週間くらいかけると良いぞい。

 

 

一日目は大牟田から船で島原へ。高速船で50分くらい。雄大な山にゆっくり近づいていく感じでわくわく感がありましたね。席は写真のデッキと、船内にもあるのですが、酔い的にも景色的にも外が良いような気がしました。たまに顔に飛沫を感じますけども。

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12時10分についたところ、熊本からの船で13時に着くと言っていた連れ合いの方がやっぱり着くの13時半くらいだったわといきなり注意を欠陥(たいへん失礼な表現)させていたため、時間がかなり空いてしまいました。ということでレンタサイクル(高速船に乗ると特典で無料だ!)で島原城の方へ。自転車で15分くらいかかるから、僕も僕でめっちゃどたばたでしたね。頑張って漕ぎました。

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雰囲気ある。それに結構大きいですね。天守は上ることができるのだけど、時間が全くないから眺めただけでした。お前何しに行ってるんだ。

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二の丸(向こうの石垣)と本丸(立ってる場所)の間の堀は水が抜いてあり、降りて間を通って島原駅の方へ抜けていくことが出来ます。これ、来た時は全く分かりませんでした。そして降りて上を見上げるとやはり大きいですね。個人的には島原城はこの道が良いです。

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その後は島原の武家屋敷へ。こっちも入れるところは全部中に入りたかったのですが、時間の都合上でいくつかしか見られませんでした。何しに行ってるんだ。でも水路が中央を通っていて、家々が並ぶ風景はとても趣がありますね。水も綺麗だし。ここだけでなく、島原は湧水が多いそうです。

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さて、ということで頑張って自転車を漕いで合流し、雲仙へ。雲仙は普賢岳妙見岳、国見岳と三峰あって、加えて普賢岳から派生して、直近の噴火で出来た雲仙最高峰の平成新山があるという感じ。平成新山以外は登ることができるそう。まあ温泉宿街があるところから、普賢岳は片道3時間以上はかかりそうです。でも近くの小学校は、小学校から普賢岳の頂上まで歩くらしい。軍隊かよ。僕たちは着いたのが昼過ぎだから、暗くなるし普賢岳は無理です。一日泊まって二日目とかなら行けるかな。今度は全部制覇したいですね。

 

宿から送迎タクシーで途中まで送ってもらい、妙見岳は登りました。30分くらいでロープウェイがあるところまで登れる(車でも行けます)のですが、わりときつい。勾配が。そしてロープウェイで頂上付近へ。え、ロープウェイの写真とかはないのかって? 僕高所恐怖症なんですよね……

そしてロープウェイで登った先、山頂付近は雲の塊だった。残念。心の目で見ろ。

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平成新山(虚無)

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その後、降りてきて雲仙地獄へ。

これは(新)八万地獄。人間の八万四千の煩悩から来ているらしい。108ではない理由がわからなかった。この日は山の方へ煙が流れていたのですが、翌日の朝は風向きが変わって道路の方にガスが行っていて、歩くのも大変そうでした。硫黄臭めっちゃある。あとですね、この辺一体地熱が凄いから、歩いてるところも触るとめっちゃ熱いんですよ。写真で伝わらないのが残念です。行ってくれ。

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そして大叫喚地獄。奥に見える案内はガスの影響か完全にくすんでいました。地獄名の由来は、ガスの噴出時に鳴っている低い音が、人々の呻き声に聞こえるから、だそうです。実はガスの噴出場所は長い年月をかけて移動しているらしく、以前はもっと勢いがあり、低音だったのかなあという気がしました。

それからトップに乗せた「地獄内は危険です」という字面だけ見るとめちゃくちゃ面白い掲示を見つけたのもここら辺ですね。地獄は環境省の管轄だそうだ。『鬼灯の冷徹』の彼らも、実はシン・ゴジラの尾頭課長補佐と勤務先が同じなんですよ。

そんなこんなで暗くなったので宿へ帰還。ご飯食べて温泉に入って寝ました。

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おいしかった。

温泉も最高だった。最高だったから朝も入った。(小学生並)

 

次回行くなら晴れてる日に(超重要)普賢岳に登って見たいですね。それから、連れ合いの方と行くかどうか散々に悩んだ雲仙岳災害記念館にも行ってみたかったです。南島原の方は電車がなく行くのも大変なのですが、天草との関係が深いし、天草の方を見るなら一緒に見たほうが良いのかもしれませんね。原城跡とか。

 

雑記(マルドゥック・アノニマス二巻までの内容を含む)

記事を書くのだいたい一ヶ月ぶりなんですよね。本当は9月の三連休あたりで長崎へ旅行いく予定だったので、それに合わせてちょっとした旅行記みたいなのを書こうと思っていたのですよ。ところがふぁっきん台風によって延期を余儀なくされてしまい、一回このタイミングで書こうと思ってたのがふいになったせいか、ちょっとやる気が失せていました。10月7日から今度こそ旅行予定なのですが、またしてもふぁっきん台風がやってきましたね。しかもめっちゃでかくない? 905hPaって何。今年多いですよね、台風一家。(意図的な誤字)

 

どうでも良い話なのですが、キーボードを買い換えました。なんか前のキーボードは勝手に特定のキーが連打されるようになってしまい、キーボードの掃除からドライバの再インストールまで色々やったのですが、直りませんでした。買い換えてからPC前で妙にテンションが上がっており、今日もここまでで400字弱とたいへん絶好調です。いつもは1000字を超えるとだいたい力尽きるんですけどね。お金を使うと気分が高揚する。やはり散財は神。ついでにマウスも換えました。

 

 

まあこの一ヶ月の間全くの虚無だったわけではなくて、宮内悠介とか今読んでる『戦争は女の顔をしていない』とか、まあちょくちょく本を読んでいました。でも映画はシン・ゴジラが最後。世間では君の名はとか聲の形とか色々やってるのですが、どうにもね。なんだろうね。

 

というか、まだ全然序盤のアレクシエーヴィチはともかく、宮内悠介の『盤上の夜』とかは私の趣味関心的にも本当はブログで感想をがっつり書けよという感じなんでしょうが、上記の通りいまいちやる気がなかったのと、なんか適切な表現が全く思い浮かばなかったのですよね。これは『ヨハネスブルグの天使たち』もそう。自分の中では絵画の感想を書くのが難しいのと同じようなイメージです。わかってくれ。北方謙三『楊令伝』的に言うと

岳飛は、めぐるましく動く、崔如の指を見ていた。赤だが、濃淡のある三枚の紙が、実に巧みに組み合わされ、見事な花が、崔如の手の中でできあがる。それを見事としか言えない自分の無骨さが、岳飛には情けなかった。きちんと言い表せる、きれいな言葉が、ほんとうはあるはずだった。

これです。

 

 

さて九月に読んだ本といえばマルドゥック・アノニマス二巻ですよ。というかこれ絶対三巻じゃ終わらないですね。元の構想らしい全八巻構成だと現在の登場人物の九割以上は死んでそう。

 

マルドゥック・アノニマス二巻、主人公はウフコックなんですけど、物語を動かすのは徹底してアウトロー集団である「クインテット」とそのリーダーである「ハンター」です。ウフコックはただ観察者であり、イースターズ・オフィスの面々もそう。

 

作中ではハンターとウフコックが似たような能力を持つことが何度も描かれます。共感能力を用いて相手を安心させるウフコック、相手の心を確実に損なうハンター。自身の分身を作り出して情報を収集する潜入手法。どちらも同じように能力が使えるが、その使用方法に違いが生まれるのは「濫用」の有無、ただ一つでしょう。これは良心と言い換えても良い。ウフコックがハンターに共感を示すようになっていくのは、一巻で言われているように、ウフコックがウフコック自身を濫用しているから、ということなのでしょうね。ということは、ウフコックはこれからもハンターに入れ込んでいってしまうと予想しちゃうわけで、ガス室へ向かう心境というのは最後の良心という感じがして今からとても辛いものがありますね。

 

そういえばもう一組これは対比された存在ではないかなと思うものがあって、それが「ホスピタル」とルーン・バロットです。バロットを連想させる黒髪と黒い瞳で、ただ無表情でうつろな「ホスピタル」。僕はこれは「イースターとウフコックに出会わなかったバロット」じゃないかなあと読んでいます。

 

選択するんだ――生存の選択。その権利は君にある。……

君は生き延びた。復讐でも人生のやり直しでも何でもできる。金もたっぷりある……というか、これから作るんだ。どう、わかるかな?

君は一人でもあそこから出ていける。君には検診もメンテナンスも必要ない。君は二度とこのゲームに関わることなく、自分だけの世界を築いて暮らしていけるだろう。必要とあらばその能力で、大いに稼ぐことも出来るに違いない。

 

ホスピタルは結局ハンターについていくことになります。イースターズオフィスに従うバロットそっくり、ホスピタルがハンターに強い共感を抱くところもバロットとウフコックの関係そっくりです。

 

ただ一つ違うところは、まさに良心の存在であり、濫用するかしないか、という一点です。バロットも『スクランブル』で過ちを犯したけれど、そこから立ち直り能力を完全に自制し、そして自立していきます。ハンターはその能力を利用(濫用)するために、ホスピタルが自立することは許さないでしょう。ということで、ホスピタルはこのあと自分の能力を「濫用」するようになるのではないかな、と踏んでいて、バトルが増えそうな三巻(以降)では、バロットと対峙するシーンもあるのではないかなという勝手読みをしています。これ当たったら褒めて。

 

そんな感じです。はやく三巻を出してくれ。

「好きな次の一手」選

マイベストエピソードというアニメの好きな話数を書く記事を見たのですが、アニメはどーにも書けそうにないので、便乗で将棋の好きな手を選びます(謎理論)

 

将棋がわからない方にも出来る限りわかりやすく書くつもりです。駒の動き方は説明しないので、分からない方は何か見ながらどうぞ。にわか観る将だから、反対に玄人の方は最近の棋譜ばっかりかよと思うかもしれません。将棋も弱いし。まあその辺は最近将棋を観られる場所がたくさんあるということで。みんなも将棋連盟モバイルをダウンロードしてくださいね。

 

1.順位戦 屋敷伸之広瀬章人 4三金寄

屋敷伸之 vs. 広瀬章人 第74期順位戦A級3回戦 - 無料の棋譜サービス 将棋DB2

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将棋というゲームは対局中は誰とも相談できない、不安との戦いでもあります。そんな中、自分が攻めたとき相手が必ず守らなければならないような「強い手」を指せば一瞬安心できるのです。たとえば、最も強い手である王手を指したら、相手は必ず対応しないといけないでしょう? 相手に対応を強制すれば、技をかけられて一本負けは避けられるから、その瞬間は安心できるわけです。だから僕らは強い手を指したがる。そういう不安はきっとプロでも同じで、相手に手を渡すのはやっぱり怖いのです。

 

さて、上の局面は攻防が一息ついたところ。ただここで守る手を指すとまた相手に攻められて、技をかけられるかもしれません。上記の不安がよぎります。まして、大駒と言われる飛車・角行という強力な駒が三枚もあるのだから、なおさら持ち駒を使って攻めてみたいところです。

 

ところが後手の広瀬八段が指した手はじっと4三金寄。とても渋い守りの手でした。

 

ちょっとだけ具体的な話になりますが、上の局面で先手の番だと、5一に飛車を打つ手と、3四に桂を打つ手という二つの攻め方があります。どちらも厳しい攻撃です。前者は王手なので逃げるしかないですが、逃げると5三にいる金が取れます。後者の3四桂という手は、後手の王様は2二に逃げた形に耐久力があるから、その逃げ道をあらかじめ封鎖する意味です。4三金寄はそのどちらの攻めも消しているわけです。同じように飛車を打っても金は取れなくなっているし、桂馬を打つとさっき移動した金で桂馬を取れるようになっていますからね。

 

これは次の手も凄い。屋敷九段が指したのは6三銀。こちらも豊富な持ち駒を使わず、盤上の駒をそろりと相手の王様に近づけます。一歩下がれば一歩だけ追う。対峙する剣豪同士の間合いの測り合いを見ているようです。

 

もう一局屋敷九段。

2.竜王戦一組 屋敷伸之佐藤天彦 8二と

屋敷伸之 vs. 佐藤天彦 第29期竜王戦1組 - 無料の棋譜サービス 将棋DB2

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「詰めろ」という将棋用語があります。詰めろとは、相手が守りの手を指さなければ、次に王手の連続で相手の王様を捕まえて勝つことが出来る状態、いわばリーチです。そのため、リーチに対して出来ることは、「相手の王様を捕まえて、勝つ(先にゴールに到達)」「王手をする(一瞬だけ対応を強要する)」「守って詰めろを解除する(根本的にリーチではなくする)」の三つ。ですから、詰めろはかなり「強い手」です。ちなみに「詰めろ逃れの詰めろ」という相手に詰めろをかけつつ自分の詰めろを解除する、クロスカウンターみたいな技もありますよ。「詰めろ逃れの詰めろ」を「詰めろ逃れの詰めろ」で解消するという凄まじい応酬もたまにあります。

 

さて、上の局面はもうゲーム終盤。先に詰めろ、もしくは解消不可能なリーチ(強い詰めろ)である「必至」をかけて、一瞬でも早く相手玉を捕まえたいところ。

 

屋敷九段は一時間弱考えて、8二とと指しました。これは凄まじい手です。この手は守りでなく攻めの手。でもこの手は詰めろでもなんでもないし、次に7二とと隣にいる銀を取っても詰めろにはならない。つまり、終盤の緊迫した局面ではおぞましいほどゆっくりした攻撃なのです。

 

言ってみれば150kmのストレートが飛び交う中突然80kmくらいのスローカーブが飛んできたようなもの。この手、佐藤天彦名人は一秒も考えてなかったでしょう。きっと間違いありません。普通考えません。

 

後手の佐藤名人は4五銀。この手は詰めろ。150kmのストレートです。しかし4四桂(王手)4二玉3二桂成(王手)同玉5五角(詰めろ逃れ)と狙い済ましたカウンターで詰めろを解除しながら相手玉を攻めて最後はきっちり勝ち。長考すると相手の読みを外す手を指すと言われ、その変幻自在・緩急自在の攻撃でその名を馳せた「忍者」屋敷の面目躍如です。

 

 

3.朝日杯 大平武洋ー堀口弘治 5四銀

大平武洋 vs. 堀口弘治 第9回朝日杯一次予選 - 無料の棋譜サービス 将棋DB2

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渡辺明二冠という棋士がいますが、彼が言った単純形勢判断に、はじめ4枚ずつ持っている金駒(かなごま)(金将銀将のこと)が、6-2になったら6枚の方が有利、7-1になったら7枚の方が勝勢というものがあります。では8-0ならどうなるのか。というか金銀がそれだけあったら、本当に勝てるのか。そう思いませんか?

 

さてこの将棋。先手の大平六段は金駒を八枚コンプリートしています。というか、上の局面でこれは既に凄い。というのも、

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ここから、5六金打(持ち駒の金を盤上に打った)、5五金打(これも)、と次々と駒を投資しているのです。飛車や角という単独で強力な駒に対して、金銀の強力なスクラムで対抗しているわけですね。そして5四銀とおまけにもう一枚追加。5四銀まで進んだところの先手陣ははまるで要塞かファランクスのよう。

 

将棋ではこういうのを「押さえ込む」といいます。相手の攻撃を完全に封じて一マスずつ進む駒で盤上を制圧してしまう。されると何も出来ずに寄り切られて負けです。この将棋なら、先手は一マスずつひたりひたりと駒を近づけて相手の王様を押し潰しに行けば良く、反対に後手は盤上を制圧する金銀の密集陣形を突破する術がありません。実際この将棋もほどなくして後手の堀口七段は投了します。

 

近接する8マスの内、飛車と角は4マスしか動けませんが、銀は5マス、金は6マス動けます。接近戦では金や銀の方が強いのです。また、将棋盤には81しか升目はないから、一つの駒が利いている5マスや6マスがしばしば強い意味を持ちます。この将棋も金駒の威力、盤上を制圧する力強さ、凄まじいごり押し感が伝わってきます。

 

次はみんな大好き(私が好きなだけ)羽生三冠。

4.竜王戦挑戦者決定戦 久保利明羽生善治 3六歩

久保利明 vs. 羽生善治 第23期竜王戦挑戦者決定三番勝負第1局 - 無料の棋譜サービス 将棋DB2

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将棋の形勢判断には玉の堅さ・駒の損得・駒の効率・手番(どっちの番か。これはここから強い手の連続で相手に対応を強い続けられる、という意味があります)の四つの要素があります。ちなみに駒は玉・飛・角・金・銀・桂・香・歩の順番に価値があり、玉の価値は無限大。

 

形勢に差がないとき、駒の損得と駒の効率というのはトレード・オフの関係にあるものです。つまり、駒を「取らせる」ときは出来るだけ相手の駒が悪い位置になるように取らせ、価値の低い駒と交換するときは出来るだけ良い位置にいる駒と交換する、というように。トレード・オフにあるから、どちらを重視するかは結構好みがあります。そして、久保九段は駒の効率を重視する派の筆頭です。とても華麗な将棋。

 

しかしこの将棋では羽生三冠がその上を行きました。

上の局面では何もしないと角が取られてしまうので、5八角成とするのが普通です。角がただで取られると凄く駒を損をするので、出来るだけ損を小さくしようということですね。他に2八歩と一度王手をしてみるというのもあります。まあまさしくしてみる、という感じで、この王手への対応を見てから次の手を決めるということですね。

 

しかし羽生三冠が指したのは3六歩。なんと角がただです。4九金と取ると、3七歩成という手があり、これが厳しいでしょうというわけ。「玉は下段に落とせ」という格言がありますが、と金が上から相手の王様を押さえつけて、逃げも隠れも出来なくさせるわけですね。この場合上から攻められているので、王様の横の方にいる金銀は守りの役に立たなくなっているのです。実際の対局でもこの金銀は有効に働かず、上から攻められて潰れてしまいます。

 

トッププロで、駒の効率を誰より重視する久保九段の駒を徹底して機能させなくする、その攻め筋はもう異次元そのもの。実はこの将棋、『サラの柔らかな香車』にも登場しています。筆者は元奨励会員。やはり衝撃的な対局だったのでしょうね。

 

5.王位戦第四局 木村一基羽生善治 7七金

2016年8月22日〜8月23日 七番勝負 第4局 羽生善治王位 対 木村一基八段|第57期王位戦

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これは先日僕が大盤解説に行ったときの将棋です。ずっと先手がやや良しという展開で、あとは先手の木村八段がどう勝ちきるかどうかかなあと思われていたところ、羽生三冠がめちゃくちゃ追い上げて、現地の大盤解説では形勢不明ではないかとも言われていました。上の局面はかなりきわどいのですが、精査していくと先手が勝ち。具体的には守らずに攻めあって勝ち、もしくは7七金打と頑丈に受けても良し。

 

木村八段が指したのは持ち駒を温存して7七金。これは怖い手です。有効な守り方がない後手の羽生三冠は、基本的にもう攻めるしかないのですが、そこでこういう温存した守り方をすると窮鼠が猫を噛みかねない。こういうとき、駒を投資して受けるほうが安全なのです。だからこの守り方は怖い。

 

技術的な話ですが、しかし、7七金打とすると1二銀というしぶとい手が生じます。このときに金を打たなければ、2二金という手があるのです。要は攻めるために持ち駒をもう一枚余分に使えるために、後手の粘りを許さず寄り切れるということです。まあこの瞬間に攻めきられてたら元も子もないのですが、なんと7七金という守り方でも後手は先手の王様は捕まえきることが出来ないのです。

 

そう、木村八段は完全に見切っていたのですね。剣豪同士の立ち合いで、刃先が顔の数mm先を掠めてたとしても、相手の剣先を見切っていれば怖がらずに済む。そしてその数mmを見切って踏み込んで、勝つ。そんな感じです。

 

というわけで長くなったのでこの辺で。

将棋って面白そうだなあと思ってもらえたらいいなあ。

大盤解説会に行ってみよう!

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王位戦第四局の大盤解説会を見に行きました。

 

大盤解説会は趣味を将棋とする上でもっともお手軽に参加できるイベントでしょうか。大盤解説会はタイトル戦や、将棋界の一番長い日とも言われるA級順位戦最終局といった、注目の集まる大きな対局で行われ、その名の通り大きな将棋盤を使って目の前で、リアルタイムに進行する対局をプロ棋士が解説します。地方で行われるタイトル戦で、その対局場ないしその周辺で開かれますから、地方将棋民にとっては特に嬉しいイベントです。

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こんな感じ。

今回は解説が豊川七段、聞き手は香川女流三段。(平日昼だからか年齢を感じる後頭部が多いな……)(ひどい)

 

出入りは自由で、参加費は場合によります。あるときは1000-2000円くらい? 基本はないものなんですかね。別に必要なものはないので、会場に行けばオッケー。お手軽簡単です。もちろん解説が主でとてもわかりやすいのですが、長時間のイベントなので、棋士も様々なトークで場を盛り上げてくれます。そういうのも楽しい。ちなみに今日の豊川七段はとてもギャグが多い人。「これは難しい。難局ペンギンです」じゃあないんだよ。

 

さらに行ってみるとわかると思いますが、将棋界というのはプロとファンの距離がとても近い世界です。聴衆からこんな手はどうですかって質問が飛ぶこともよくありますし、これから行かれる皆さんがこれだとどうなるのって聞いても良いのです。強い人は優しいもの。良い手ならはちゃめちゃに褒めてもらえるし、すっとぼけた手(僕は弱いから残酷な表現をする)でも否定されないからお気軽に。

 

ちなみに今回は対局場と大盤解説会場が違ったのでありませんが、二つが同じ場合は終局後、両対局者が会場で少し話される場合もあります。終局後までが大盤解説会。

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これは二年前の王位戦。対局者は寄しくも今回と同じ羽生王位(左から二番目)と木村八段(右から二番目)。

 

基本的に棋士の明晰な解説と軽妙なトークを楽しめばオッケーですが、加えて何度か「次の一手クイズ」があります。当たった方から抽選で棋士の揮毫入り色紙や扇子が当たります。スポンサーの新聞社のタオルやボールペンのこともありますが! 将棋わかんないよ~って方も、候補手の中から三択くらいで選ぶ形式なので勘で大丈夫。大穴当てれば色紙を高確率でゲットできます。受け取るときに棋士と握手もできる。棋士と握手すると強くなった気分になりますね。(※強くはならない)

 

そんな感じです。NHKに出ていた人が目の前に現れるイベントが大盤解説。特に準備もなくふらっと参加できるので、皆さんも是非。スポーツ観戦・解説という感じですかね。みんなで盛り上がるのも同じ。

そういうわけで、イベント情報はこちらから 。

大盤解説会情報|お知らせ・イベント情報:日本将棋連盟

 

Q:何か準備した方が良いものは

A:飲み物くらいはあったほうが良い

Q:気をつけることは1

A:結構早い段階で席が埋まるので早めに到着しておきたい。立ち見は辛い。

Q:気をつけることは2

A:終わる時間読めないので、最後まで付き合うなら時間に余裕を持って。将棋会館で行われるA級順位戦最終局解説なんて深夜一時コースは待ったなしです。電車は間違いなく、ない。

Q:気をつけることは3

A:二日制の対局では決着がつく二日目の方が良い。たぶん。

 

誰かにとって何者かであるということ

散々人から勧められていた輪るピングドラム、ようやく見ました。

ちょっと最後は意表をつかれたのですが、それは後で書きます。

ただただ面白かった。前半のギャグ感からシリアスにシフトしていく感じはなんとなくSteins;gateを髣髴とさせましたね。

 

すっげえネタバレというか、未視聴の方はてんで分からない感想になりそうなので、見てない方は今すぐブラウザバックしてくれ。いや視聴直後の熱そのもので書いてるから見てても支離滅裂でわけわからんかも。すまんかった。

 

 

 

作品の主要キーワードになっているのは、「きっと何者にもなれない」「生存戦略」「運命」の三つですよね。

 

きっと何者にもなれない、というのはtogetterとかで色々解釈があったのを見たのですが、僕は「運命を変えられない」ということかなあと思いました。何を持って運命というのかは難しいなあと思うのですが。「何者にもなれない」と対比されるだろう「特別な存在」と称されたのは、(一回しか見ていないので聞き逃しがあるかもしれませんが)多蕗が桃果を称して言ったのくらいです。そして彼女はそういう意味では本当に「特別」です。ただ、重層的に才能のある人、有名人という意味でも使われているんですかね。よく分かりませんが。トリプルHの話であったり、多蕗とゆりの話であったり。

 

作品の序盤から13話くらいまで、荻野目苹果というとんでもないストーカー女の話を中心に進みますけど、荻野目苹果は「何者にもなれなかった」普通の人です。彼女は荻野目桃果ではないから、多蕗桂樹と結ばれることもないし、父を荻野目家に繋ぎとめることもできない。でも彼女は、高倉晶馬とのかかわりの中で、自分が荻野目苹果であるということを納得して、そして荻野目苹果としての人生を歩むわけです。日記を追う必要がなくなったように。再婚した父を祝福したように。そしてそれがきっと「生存戦略」なんですよ。運命を本当の意味で受け入れるということ。

そういう不幸を運命だって受け入れるのはとても辛いこと。でもあたしはこう思う。悲しいこと、辛いことにもきっと意味はあるんだって。無駄なことなんて一つもないよ。だって、あたしは運命を信じているから。

 

 

荻野目苹果は荻野目桃果ではないように、自分は自分の人生をやめることは出来ません。なんで(病に侵されたのが)陽毬だったのかという叫びは、それが運命だったからとしか言いようがありません。こういうの、渡瀬眞悧の言い方をすると『自分という箱から逃れられない』でしょうか。でもそれを呪ってしまうのは「生存戦略」から離れるというのが見ていて思ったことですね。

 

この構造は形を変えてなんども現れていたと思っていて、運命を呪っている人、過去に捉われている人々は揃って「罰」を受けています。一度は死んだはずの高倉陽毬を救おうとする高倉家の兄弟二人は言うまでもないし、世を呪い続けた高倉剣山も死んでいる。過去に捉われていた多蕗桂樹も時籠ゆりの代わりに刺されるわけです。ゆりは最終的に苹果に日記を返していますよね。桃果の死を受け入れて未来に進もうとしているから、彼女は罰を受けなかった。多蕗は「罰」を受けるけど、彼も桃果の死を納得してゆりと共に人生を歩もうと改心をしたから、大事には至らない。最後まで死すべき運命だった陽毬を生かそうとし続けた冠馬と晶馬は消滅をしてしまう。

 

最後に多蕗が言うように、ほとんど全ての人間は何者にもなれません。むしろ、万人にとって特別な何者かである桃果の方が異常な存在です。でも何者にもなれない人も、誰からも選ばれない、存在価値のない「透明な存在」であるわけではありません。誰もが誰かにとって特別な存在であり、それを象徴する言葉が「運命の果実を一緒に食べよう」であり、「愛してる」であり、「だから私のためにいて欲しい」なのかなあと。誰かにとって何者かであるから、運命を少しずつ変えていくことができる。そうして世を生きていくんだよとかそういうところに話は落ち着いたのかなあと思いました。

 

 

でちょっと脱線すると、ちょっと意表をつかれたと書いたのは、僕は陽毬は一話の時点で既に死んでいた存在だと思っていて、死んだ存在(陽毬が眞悧にあたし治らない・死ぬんでしょ、に死なないと返したのは既に死んでいるからだと思ってました)だから生き返らないと思っていたのですよ。兄弟二人が陽毬の死という運命を受け入れてこれからの人生を生きていくのが「生存戦略」じゃないかなーって思っていたので、最後までそれを否定し続けて消滅しちゃうのはちょっと予想外だったわけです。

 

でも書いてるうちにこれはこれでってなりました。高倉家の三人がそれぞれに「特別」だから、陽毬の運命を乗り換えることができた、と納得してしまいましたね。(ガバガバ論考)

 

 

なんとなくですけど、思い出したのは大高忍『マギ』なんですよね。運命に逆流すると堕転してしまうでしょう。あれです。アリババとカシムの話とか完全にピングドラムだったのでは。(記憶改竄)あとはバガボンドの「人の一生はあらかじめ定められていて、それでいて完全に自由」という奴。なんとなく近しい運命感を感じましたね。まあこれはなんとなくなんですけど。