読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

僕は忘れない、あの日のことを

140字では伝えられない。

戦うために生まれてきた

伊高浩昭『チェ・ゲバラ 旅、キューバ革命ボリビア』を読みました。

革命家チェ・ゲバラの一生を追う一冊。モーターサイクル・ダイアリーズを見た影響ですね。

 だがいつも私の心には〈祖国か死か、勝利するのだ〉の標語がある

アルゼンチンで生まれたエルネスト・ゲバラは複数回の南米旅行(その中の最大の物がアルベルト・グラナードとの南米縦断旅行『モーターサイクル・ダイアリーズ』だ)を経て、ラテンアメリカ全体での革命、反米闘争を志すようになる。その後フィデル・カストロと出会い、キューバ革命に貢献。革命政権でも要職を担うが、若き日のラテンアメリカの革命推進の夢を捨てず、コンゴ・そしてボリビアの革命運動へ赴く。

 

読んだ印象としては、ゲバラは「戦うために生まれてきた」というのがぴったりで、戦いたいという意志がまず強くあって、そこに戦うための適正として強靭な意志力や忍耐力、強い運を持っていたのだなあと感じましたね。何と戦うのか、ということは南米旅行を通して後から見つけたものという感じ。生まれた場所や環境が異なれば、違う場所でやっぱり戦っていたんだろうなあと思います。趣味だったチェスが職業になっていたかもしれない。

 

ただ、キューバが安定していくとそういう反骨精神(例えば反米はともかく、反ソでもあったのはキューバの情勢から鑑みて得策ではなかった)は多くの人間、盟友だったフィデル・カストロにすら疎まれていき、孤独の中ますます戦いに傾倒していったわけです。著者はボリビアの革命運動は準備不足や逆境が重なりゲバラが出立する前に失敗が確定していたようなもので、ゲバラ自身も覚悟して死地に赴いたのではないかと記しています。

著者の評価は

チェは、人の命を救う医師の資格を得ながらも人を殺す武器を手にし、キューバで武力革命に成功すると自信過剰気味となって、平時よりも戦時に魅惑され、死を覚悟しつつ絶えず戦場を求め、最後には敵の武器によって命を絶たれてしまう。

ととても厳しい。戦場にロマンを求めていたのではないか、というわけです。

 

キューバ革命後の革命政権のごたごた、失政、そういったものに多くの紙面を割いたのは、暴力によって成し遂げられることの少なさというのを暗に示しているような気がしましたね。ゲバラの栄光と挫折は、そのまま暴力による古い枠組みの破壊という可能性と、創造の不可能性に繋がっているのではないか、という風に読みました。

 

 

全体として凄い記述が詳しくてそれは面白いんですけど、~~が~~したみたいな記述が延々と続くので読み物としてどうなんだよという風に何回か思いました。心が宮崎市定を求めることになった(?) いや僕が本読むの下手なだけなんですかね……?

 

どうでもいい余談ですけど、何かと戦いたい人って世の中わりといる気がします。戦う対象を見つけられないとインターネットを彷徨するTwitterレスバトル勢になったりしする(失礼)

死によって永遠に戦い続けることになった革命家には、信仰や戦う対象を見つけられない人々の憧憬が向けられているような気がするのですよ。

 

チェ・ゲバラ - 旅、キューバ革命、ボリビア (中公新書)

チェ・ゲバラ - 旅、キューバ革命、ボリビア (中公新書)

 

 

本著のゲバラは気難しくて激しいみたいなところがありましたけど、旅行記はひたすら楽天的で明るかったですね。楽しい。

モーターサイクル・ダイアリーズ (角川文庫)

モーターサイクル・ダイアリーズ (角川文庫)